マゴットセラピー(ウジ治療)の株式会社バイオセラピーメディカル
マゴットセラピーの臨床

ドレッシング法の選択

 マゴットセラピーを行う際には治療中の脱走を防ぐためのドレッシングをいかに行うのかが大きなポイントになります。その方法の確立には試行錯誤の時期がありましたが、現在では大きく分けて3種類のドレッシング法が確立され、症例によって使い分けられています。
ドレッシング法選択のフローチャート
<ストッキング法>
 四肢全体をストッキングにてカバーする方法です。手技が簡便で脱出のリスクもほとんどないので、現在多くの施設で用いられています。ストッキングは市販のものを使用することもできますが、稀に脱走することがあるので、多くの場合は専用のストッキングを用います。

 →詳細な治療手技は「治療方法(ストッキング法)」のページへ

<囲い込み法>
 創周囲に周堤を作り、メッシュでふたをして囲い込む方法です。ストッキングを使用することができない体幹の創を治療する時に用います。手技がやや煩雑になることと、体動などによりドレッシングが剥がれ脱走するリスクがあることが欠点です。周堤の作成には厚みのある創傷被覆剤や褥瘡除圧用のフェルトを用いたりします。

 →詳細な治療手技は「治療方法(囲い込み法)」のページへ

<バッグ法>

 予めティーバッグ様のバッグ内にマゴットを封入して患部に置く方法です。体のどの部分の創にも用いることができ、メッシュの網目を通してマゴットの分泌液が患部に到達しデブリが行なわれます。

 2000年に開発された方法で、手技が非常に簡便で脱出のリスクがないため欧州にては広く用いられています。

 マゴットを直接患部に置くストッキング法や囲い込み法に比べてデブリのスピードがマイルドになるために、通常より長く(4〜6日間)患部に置いておきます。この留置期間中は必要に応じて患部の観察や洗浄処置を行うことができます。また他の方法に比べて疼痛の副作用がほとんどないことも大きなメリットです。 一方で凹凸の大きい創やポケットが存在する創は、デブリの”死角”ができてしまう可能性があるために、他の方法を用いた方が良い場合があります。

 →詳細な治療手技は「治療方法(バッグ法)」のページへ

ドレッシング法のオプションと特徴

ストッキング法
囲い込み法
バッグ法
特徴 四肢全体をストッキングにてカバーする方法。手技が簡便で脱出のリスクもほとんどない。 創周囲に周堤を作り、メッシュでふたをして囲い込む方法。手技がやや煩雑になることと、体動などによりドレッシングが剥がれ脱走するリスクがあることが欠点。 予めティーバッグ様のバッグ内にマゴットを封入して患部に置く方法。簡便で脱出のリスクがないが、デブリのスピードはマイルドになる。
準備(購入)物品 フリーマゴット

専用ストッキング
フリーマゴット

除圧用フェルト
+
メッシュカバー
マゴットバッグ
適応症例
  • ・四肢に存在する創で、短期にデブリを完了したい場合
  • ・体幹に存在し、深く凹凸やポケットの存在する創
  • ・凹凸が小さく、ポケットの存在しない創
  • ・疼痛が強くマイルドにデブリを進めたい症例
ドレッシングにかかる手技時間 2〜3分 3〜10分 1分
留置期間(デブリのスピード) 48〜72時間
(早い)
48〜72時間
(早い)
5〜7日間
(遅い)
治療中の患部の観察/洗浄 不可 不可
脱走のリスク 時々あり なし
疼痛副作用 時々あり 時々あり
その他 市販のストッキングは脱走することがあるため、治療専用のストッキングの使用が望ましい。 周堤の作成にはハイドロコロイド被覆材や褥瘡治療用の除圧フェルトなどを用いる。 文献的には直接マゴットを置く他の方法に比べてデブリのスピードが約1/2になることが報告されている。