マゴットセラピー(ウジ治療)の株式会社バイオセラピーメディカル
マゴットセラピーの臨床

マゴットセラピーでの禁忌・慎重使用例

下記項目に該当する場合は禁忌または慎重使用例と考えられます。十分検討の上使用を決定し、治療中は十分な観察をするとともに、有害な事象が出現した場合は直ちにその使用を中止して下さい。

<禁忌症例>
・著しい血流障害を伴いその改善が困難な場合。マゴットちゃん
・患部感染が急速に進み外科的切除の早期施行が必要とされる場合。
・太い血管または消化管が露出している創。
・コントロール困難な出血性疾患を合併する場合
・体内深部に通じる創。
・ウジに対する過敏症(アレルギー)を有する場合(過去に医療用ウジの使用で過敏症を 起こした
 経験がある場合)。

<慎重使用例>
・骨壊死を伴う場合 →マゴットによる摂食が不可能なため、外科的切除が必要となります。
・深部膿瘍を伴う場合 →マゴットによる摂食が不可能なため、治療前のドレナージが必要となります。

マゴットセラピーの副作用とその対策

海外での使用実績からはマゴット(医療用ウジ)の使用による重大な副作用は報告されていませんが、下記の様な症状が生ずる可能性があります。
1.疼 痛 

「つつかれるような感じ」から「痛み」まで表現は様々ですが、5〜30%の症例に認められるといわれています。糖尿病性潰瘍・壊疽の場合は比較的軽度ですが、治療前から痛みが生じていた場合や閉塞性動脈硬化症(ASO)・閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)などの末梢動脈性疾患では強い痛みを感じることがあります。
マゴットによる直接的な機械刺激や創面のpH上昇が原因と考えられています。通常は鎮痛剤の内服や筋肉注射にてコントロール可能ですが、治療前に強い痛みが予想される時は硬膜外チューブをあらかじめ挿入し、持続硬膜外麻酔下に治療を行う場合もあります。もし痛みが強く我慢できない場合はマゴットを患部より取り除くことですみやかに症状は消失します。

2.出 血 

1%未満の割合と言われていますが、創面からの出血も報告されています。出血性素因がある場合や創面に露出する血管壁の一部が壊死を起こしている場合に生じやすくなります。通常は微量な出血ですみますが、出血が持続する場合はマゴットを取り除くとともに止血処置が必要となります。

3.発 熱 

一時的な発熱が認められることがあります。メカニズムは不明ですが、マゴットの分泌物に含まれるサイトカインという炎症物質が原因とも考えられています。解熱剤の使用にても発熱が持続する場合はマゴットを取り除いてみることも必要となります。

4.感染,炎症による創傷悪化 

マゴットは特別な消毒処理を行っており、明らかな病原菌の媒介は報告されていません。しかしマゴットセラピーを行うことにより蜂窩織炎の悪化など既存の感染や炎症が増悪したケースも報告されています。このような場合は治療の中止が必要となります。

5.臭 気 

マゴットが壊死組織を融解するために、一時的に創部からの浸出液がアンモニアと類似した臭気を発します。外側のガーゼ交換や消臭剤の使用で対処します。

6.高アンモニア血症 

1万匹を超える幼虫に感染した家畜が、幼虫が放出するアンモニアによって高アンモニア血症を起こした報告があります。マゴットセラピーにおいてはこのような多数の幼虫を用いることがないため、有害な高アンモニア血症が起こった事例は過去に報告されていませんが、原因不明の発熱・精神症状・食欲不振などが持続する場合は、血中アンモニアの測定とともに幼虫を取り除いてみることも必要となります。